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2023年上半期良かったアニメ

こんにちは。

2023年上半期良かったアニメについて書いていこうと思います。クールごとに、気に入った作品から順に並べています。回を重ねるごとに作品数も文章量がコンパクトになっている気が……

半年前の良かったアニメは↓

unitcircle.hatenablog.com

転生王女と天才令嬢の魔法革命

tenten-kakumei.com

小説家になろう』から書籍化された原作小説のアニメ化。魔法の適性がない転生王女アニスフィアと、魔法の才に恵まれた才女ユフィリアによる、魔法革命の物語。

視聴前に想像していた華やかなイメージだけでなく、何かを求めたり憧れたりしながらもそれを叶えられない苦しさを抱える登場人物たちを繊細に描いていく、そんな作品でした。

原作小説の3巻までをアニメ化ということで、本アニメも大きく3つに分けられます。その中でも序盤(1巻に該当)の話を少し。1話*1は婚約破棄されたユフィリアを抱えて空に飛び立つ(自由にする)までがアニスフィア視点で描かれ、以降はユフィリアの視点で王女アニスフィアの人柄を知って行く進め方になります。こうなるべきという模範を目指して教育されて生きてきた令嬢のユフィリアは、王女アニスフィアの自由さ、発想の大胆さに驚かされます。アニスフィアを「どこまでも羽ばたく美しい鳥」、多くを失った自らを「どこにも行けず落ちて行くだけ、空っぽ」と評するほどに。この人のようになれたらと思うユフィリアですが、一方でアニスフィアが魔石を求めて危険を冒してドラゴン狩りに挑むことや、アニスフィアの信じる「魔法使い像」を理解できません。でもユフィリアはアニスフィアの想いは守りたいし、少しでも理解したく、対ドラゴンでの同行を訴えるのです。わからなくても大切にしたいし、わからないからこそ理解したい、相手を大切に想うとはそういうことなのでしょうね。

アニスフィアの自由な考え方や魔法への拘りは前世の知識に由来することが大きく、それによってアニスフィアは理解されずに本質的な孤独を抱えていたと思います。魔法がフィクションの存在だった世界の知識を持ちながら魔法の実在する世界に生まれ、それでも自分は魔法を使えない。そんな彼女が魔法に憧れを抱き、不可能を可能にし、誰かを笑顔にするものだと信じることに不思議はありません。それは、ユフィリアを始めとする生まれつき魔法を使える者には、簡単には理解できない想いでしょう。そして、自分が魔法を使うには真っ当な方法はないとわかっていながらも、何か方法があるならそれを選ぶしかないのが、アニスフィアなのです。アニスフィアは*2普段の諭すような優しい語り掛けと、その中に見える強い意志と隠した弱さが魅力的なキャラクターですね。

本作のOP曲『アルカンシェル』のイントロの「手を伸ばして焦がれていた 届くはずない光」は、光に届かないとわかっていながらも手を伸ばしてしまう登場人物たちを映像とともに表現していてとても良いです。アニスフィアにとっての魔法や魔法を巧みに操るユフィリア。ユフィリアやアルガルドにとってのアニスフィア、などなど。

ED曲『Only for you』ももちろん良いのですが、ラップ調にすることで二人の想いをそのまま言葉で表現しているカップリング曲の『Take your hand』も必聴です。

youtu.be

ポールプリンセス!!

poleprincess.jp

『プリティーシリーズ』を手掛けてきたエイベックス・ピクチャーズタツノコプロによる、ポールダンスを題材とするオリジナルアニメーション企画。2022年冬に各キャラクターのポールダンスショームービーとともに全7話のショートアニメが公開されました。感想は↓の記事にまとめています。

unitcircle.hatenablog.com

D4DJ All Mix

anime.d4dj-pj.com

『D4DJ First Mix』、『D4DJ Double Mix』に続く、サンジゲンによる『D4DJ』のアニメ化作品。ゲーム版の初期6ユニットが共演し、ファン向け要素は強いものの、アニメーションとしての楽しさが感じられる、そんな作品でした。

本作は、月に一度開催するイベントに焦点を当て、各話に担当ユニットを割り当ててほぼ毎話一月ずつ進んで行き、全12話で一周する構成になっています。D4DJの「繋ぐ」「回る」を体現し、1話1話の区切りがあってそれらが連なっていくTVアニメという形式を活かしているところが良いですね。それにより進むごとに季節の変化も感じられ、強い縦軸を持つというよりは日常を切り取ったような描き方をしていたように感じます。

アニメD4DJの特徴ともいえる、3DCGの硬さを感じさせない豊かな表情や動きの変化はさらに進化していて、ライブシーンも含め、アニメーションとして魅力的でした。

最強陰陽師異世界転生記 

saikyo-onmyouji.asmik-ace.co.jp

小説家になろう』から書籍化された原作小説のアニメ化。裏切りに遭い命を落とした最強の陰陽師が、異世界に転生して次こそは狡猾に上手く立ち回ろうと行動する物語。

本作の魅力は、キャラクターデザインを含むヒロインのキャラ造形。その内でもストーリーに大きく関わってくるのが、魔王を倒し得る「勇者」であるアミュです。当初主人公のセイカは、その強さを見込んで隠れ蓑として利用しようと彼女に近づきます。しかし物語終盤、アミュが連れ去られたときには「力を持ち疎まれた」前世の自分と重ね、彼女を助けに向かってしまいます。当初は利用するつもりだったものの、結局親しい者は見捨てられないのがセイカという人物なのだという納得感のある描写でした。アミュと二人馬車に乗ってから流れ出す最終話ED*3もとても良かったです。視聴者としても、強そうな雰囲気で出てきた勇者アミュに対してどう活躍するのかを当初期待したところを(意外と実力をしっかり発揮して活躍するシーンが少なかったのもあって)強さより*4それ以外の面での愛着が湧くことで、結果として彼女の「勇者としての役割」だけが重要なのではないと感じさせる形になっていた気がしました。

根本的なところでは、魔法のある洋風な異世界で陰陽術という和風な術式を用いる設定が良いですね。少年の姿をした主人公が陰で暗躍し、時折低音で喋る姿は『名探偵コナン』のコナン君のような良さがあります。また、サブタイトルの出し方が工夫されていたり、ED曲を歌うキャラの組み合わせが回によって変わったり、キャラソンがあったりと細かいところに嬉しさがある作品なのも良かったです。

アイドルマスター シンデレラガールズ U149

cinderella-u149-anime.idolmaster-official.jp

ソーシャルゲームアイドルマスター シンデレラガールズ』の漫画化を更にアニメ化した作品。多くのアイドルが登場する原作ゲームの中でも、身長149cm以下の小学生アイドルを主役としています。

視聴前には、楽しみだけど自分はメインターゲットではないかもしれないと思っていたのですが、そんな予想を覆して春クール最も熱中した作品でした。

本作の魅力的な要素の一つがOPです。曲調や歌詞に感じる元気さ、溌剌さ。「ガラスの靴も 馬車もないけど じっとしてられない」に感じるうずうず感。「ドアの向こうへ出掛けよう」で二人が一旦ドアを通り過ぎてから頭だけ戻す動きが歌詞の「よう」と重なっている気持ち良さ。順にハイタッチして並び、これからステージに立つんだというワクワク感、ドキドキ感。「朝だよ おはよう 遊ぼう」という一日(そして一話)の始まりを感じさせるサビ。未来が大きく広がっている彼女たちによって歌いあげられる「未来を照らす光になるよ私たち」という歌詞。映像も込みで、春クールで最も印象に残るOPでした。終盤のEDがおはようの対となる「グッデイ・グッナイ」なのも良いですね。

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さて、本作は「子供」を全体のテーマとし、対となる「大人」との対比や、子供と大人で変わらない部分について言及しています。アイドルたちは子供であり、まだ力を持たず、純粋で、でも大人が思う以上の強さもまた持っている。対となる大人は、会社の上司やアイドルの両親、そして先輩アイドル。プロデューサーも大人であるけれどまだ若く、身長も低く、子供の目線にも立つことができる存在になっています。

各キャラクターに当番回が与えられる構成になっていて、内容もバラエティ豊か。4話の櫻井桃華さんの立ち振る舞いと、総集編での「そして自由は、まるで空に身を投げ出すことのように怖いけれど、とても素晴らしく、美しいものなのだと」という台詞。5話の的場梨沙さんの未熟さの自覚と、立ち上がる勇気。7話の古賀小春さんはシンデレラ要素を活かしたファンタジックなエピソードで、1話完結の幅の広さを感じさせてくれます。その中でも特筆したいのはやはり映像表現が圧巻の11話、橘ありすさんの回です。

11話のキーとなっていたのは「大人と子供の違いは何か」、そして「大人は泣かない」を始めとする子供や大人に対する思い込みです。冒頭では、ユニット名「U149」を上から決められて*5「子供らしさ」で売っていけと言われるものの、簡単には了承できないプロデューサーの姿が描かれます。そして両親の面談を控えた橘ありすは、自分の思いを伝えられず、大雨の中で(彼女の中では大人らしくない行動として)心に涙を流します。普段家で鉢の中で泳ぐ金魚を見ていた彼女が、大雨でできた水面を金魚鉢の中で(まるで閉じ込められたかのように)漂う姿が印象的。挿入歌『in fact』も素晴らしく、既存の曲をこの場面で(敢えて2番を)使うことで少し異なる印象を持たせることに成功しているように思います。

プロデューサーが彼女を見つけた場所は、前回みんなで初めてライブを披露したステージでした。彼女は、「大人は現実を見るもの」だからと直接両親に心の内を聞く前から決めつけ、本当は自分のアイドル活動は歓迎されていないのではないかと感じ取ってしまっていました。そんな彼女は、大人らしくもなく目の前で泣くプロデューサーを見て驚きます。そして記憶を辿っていき、母が夢を追っていた姿や絵本を読み聞かせて涙ぐんでいた姿を思い出し、「大人は泣かない」なんてことはないと理解するのでした。大人たちが「子供とはこういうものだ」と押し付けて子供たち自体を見ようとしていなかったのと同様に、ありすもまた「大人とはこういうものだ」という像に縛られていたのですね。アイドルの仕事を通じて「仕事」と「夢を見ること」は別のものではないこと、そして仕事をする大人もまた夢見ることができ、そこに関して子供と大人に違いなどないと気付いたありす。夢見る彼女が名前の子供っぽさを気にしないことにしたのを見て、おそらくプロデューサーもU149というユニット名を受け入れたのではないでしょうか。本当の意味で家族のもとに帰ったことを表す、橘ありすの「ただいま」が良かったです。

君は放課後インソムニア

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ビッグコミックスピリッツ』で連載中の漫画をアニメ化した作品。夜に眠れない二人の物語。自分も眠るのが得意ではないためテーマへの共感が強く、またいくつもの要素の関わり合いが綺麗で、とても良かったです。

本作に主人公の二人は、互いに過去の出来事から明日や未来への不安を抱き、夜にうまく眠れなくなってしまっています。夜に眠るという普通の人が普通にできている(と思われがちな)ことができないという秘密を抱えた二人が、その秘密を共有して、深夜の街という特別な景色の場所を共に歩き、その正しくない行為にドキドキする、そんなところからこの話は始まります。1話ラスト、明け方に二人が交わす「また今日!」は印象的な台詞でした。

二人は、学校の観測室を勝手に使っていたことから流れで天文部として活動を始めることになります。活動内容は夜に星を撮影することであり、それには夜の行動が必要とされ、色々な場所に行き特別な景色を見ることになり、そして撮影することで思い出を記録に残すことに繋がって行きます。自分の明日に不安を抱えた曲伊咲さんの「私のことも撮ってね」「私を残してね」という台詞は、ずっしりと来ました。撮影しようとすることは、相手を観察して最も良い瞬間を探すことでもありますね。

眠れない夜に行われる、一方がラジオ形式で語るのを一方が聞くだけの一方向コミュニケーションは、中盤以降で特に良かった要素です。双方向の通話ではない、伝わらなくてもいいけれど伝わってるといいな、というコミュニケーションには不思議な居心地の良さを感じました。ドキドキした、お互いが隣にいても恥ずかしくて話しかけられない場面で、ラジオによりお互い一方向にやりとりするシーンは、そんな二人の不器用さを象徴しているようでした。その後の、目線を合わせられず、結果としてお互いが画面のこちら側を向くシーン*6も印象的でした。

また、本編補完として作中の設定のラジオがYouTubeに上がっていて、今時の展開らしさがあってなるほどになっていました*7

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ワールドダイスター

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バンダイナムコフィルムワークスによる演劇ガールズプロジェクトのアニメで、『IDOLY PRIDE』の制作会社、監督による作品。「センス」と呼ばれる固有能力が求められる演劇界で、役者の頂点である「ワールドダイスター」を目指す少女たちの物語。

本作の軸となっているのは、ワールドダイスターを目指す鳳ここなと、それを支える静香の存在です。静香は訳あって直接舞台に立つことはあまりありませんが、ここなと一緒に演技プランを考え、練習の相手役を務め、ここなを励まします。ワールドダイスターになれるのは、明日の自分を信じられる人。一人では明日の自分を信じられなかったここなにとって、静香は明日の自分を信じさせてくれる存在でした。

一番の見所はやはり終盤「オペラ座の怪人」編。ファントム役を巡り、シリウスの劇団員がオーディションで競うことになります。誰かを演じるには、まず自分を知り、役を知り、それらを重ね合わせていく作業が必要。各々のエピソードを経たからこそ、各々がファントムと自分との間で重なる部分を見つけ、自分なりの解釈を持ってオーディションに臨むところが興味深かったです。舞台に立てない静香はファントムに自分を重ね、ここなはファントムを演じることで静香の想いを理解する、そんな流れも良かったですね。

転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒

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小説家になろう』から書籍化された原作小説のアニメ化。転生して貴族になり神から過剰な加護を受けた少年の、ドタバタコメディ。

異世界もののありがちな展開が共通認識にあることを前提とし、ハイテンポでイベントをこなしたり、主人公の行動の過剰さに周囲もまた過剰と言えるほどに驚くことを繰り返して笑いを生むタイプの作品でした。

所々の個性的な演出も光り、特にOPのカインくんがテレスティアとシルクに引っ張られていくとその背後にタイトルロゴが出てくるシーン*8がとても好きでした。キャラクターデザインが可愛らしいのもいいですね。ただヒロインの数が多い分掘り下げは控えめな印象*9

 

*1:原作はまだ未読ですがアニメオリジナルだそう

*2:姉だからなのか

*3:「いつか総てが 巡り遭うように 僕らを繋ぎ合わせるから」

*4:八重歯を中心とした

*5:自己言及的

*6:未読ですがおそらく原作漫画にもある?

*7:曲だけ/中見だけが聞けるラジオを聞ける僕って、誰?

*8:観たことある人にしか伝わらない

*9:驚き役の王様の印象は強く残りました