まわるまわる

感想を置く場にしたい

ポールダンスが題材のオリジナルアニメ『ポールプリンセス!!』の感想

こんにちは。

今回は、『プリティーシリーズ』の姉妹作品とも言えるオリジナルアニメーション企画『ポールプリンセス!!』に感じたこと、そして今後への期待について書いていこうと思います。一言で言うと、「ポールダンス」という要素に真剣に向き合うことで、観たことのない映像表現となった、そんな作品でした。

ポールプリンセス!!とは?

プリティーリズム』『プリパラ』『KING OF PRISM』『キラッとプリ☆チャン』『ワッチャプリマジ!』でお馴染みの『プリティーシリーズ』を手掛けてきたエイベックス・ピクチャーズタツノコプロによる、ポールダンスを題材とするオリジナルアニメーション企画。『プリティーシリーズ』でお馴染みの乙部善弘さんがCGディレクター、トマリさんがキャラクター原案を手掛ける作品です。乙部善弘も関わっている『プリティーシリーズ』の一作『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』にはポールダンス要素のあるプリズムショーがあり、本作にはその時の経験も活かされているのでしょうね。

2022年の冬に公式Youtubeチャンネルで全7話のショートアニメ、各キャラクターのポールダンスショームービーが公開されました。4月にリアルイベント『ポールプリンセス!! Special Event 〜Wish Upon a Polestar〜』も開催され、最近ではラジオ企画『ポルプリラジオ』も開始し、主題歌シングルとキャラソンアルバムのCDも発売。さらに2023年初冬には劇場版の公開が決まっている作品です。

poleprincess.jp

圧巻のポールダンスショームービー

本作の最大の見所は、3DCGで描かれるポールダンスショームービーです。楽曲、ダンス、そしてステージ演出が融合しており、いずれも圧巻の映像となっています。

ポールダンスを通常のダンスと比較すると、棒を使った上下移動や回転の動きがあるのが特徴的です。地上でダンスする3DCGアニメというのは世に多くありますが、高低と回転を活かした3DCGアニメは新鮮に思います。ただその動きがあるだけでなく、様々な比喩としても使われているところが良いですね(後述)。ポールに登るだけでなく、地上でポールを少し使う程度で踊ることも多く、従来の地上ダンスの延長線上であるとも言えます。

『プリティーシリーズ』に児童向けらしく*1わかりやすい「必殺技」的な要素があったのに比べると、本作はそういう要素はありません。しかし、ポールダンスの技*2の数々は、親しみがない人からすると「これ本当にできるの?」と驚くような動きです(なんと、実際に同じ動きをして撮影されているので、本当にできます*3)。曲に合わせて大技が披露され、背景とステージも大きく変化する瞬間は、「必殺技」的な気持ちよさを感じますね。

各ショームービーには、楽曲や歌詞、ステージ演出、衣装や小道具に至るまで工夫が凝らされていて、各キャラクターについて掘り下げる内容になっています。一本立つポールがありその周りを回るという点は共通しつつ、ポールや回転に対しての多様な解釈が行われていることが感じ取れます。では、特にお気に入りのショーについて少し触れていこうと思います。

紫藤サナ『Avaricious Heroine』

本格的なショームービーとしては、所属チーム「エルダンジュ」リーダーの御子白ユカリに続き2番目に公開された、サナ姫こと紫藤サナ。御子白ユカリのショーも力強い楽曲や暗い中での輝きが強く、さながらプリティーシリーズのラスボスのようだったのですが、こちらは大きく路線が変わり、ある意味ではより独創的なショーとなっています。

紫藤サナの表面的情報としてはいわゆるSNS映えを狙う系のキャラクターで、今時珍しくはありません。しかしショーの内容はただ可愛らしいというよりは、困難に思えるような動きや姿勢をとり続ける力強さがあり、そしてそれを感じさせないような明るい歌声と笑顔のギャップが魅力的でした。背景を見るとメリーゴーランドが回っていることから、サナ姫にとってのポールダンスは精一杯楽しさを見せる(たとえ大変だとしても)笑顔を絶やさない、そんな場なのかもしれません。

光や色の使い方も印象的です。序盤は紫と黒を基調とした明るいステージがあるのですが、中盤に紫が消えて暗い中でサナ姫が回り続ける技としての山場が訪れ、その後でファンの紫色のペンライトによって序盤よりも明るいステージになる。歌詞からも、ファンの後押しもまたサナ姫のステージには欠かせないということなのでしょうね。

www.youtube.com

南曜スバル『リメイン』

南曜スバルのショームービーは、他とは趣向が異なり、シンプルにカッコよさを感じさせる曲調とステージです。『プリティーシリーズ』で言うところの「ストリート系」ですね。

南曜スバルは体操選手としての道を怪我で挫折し、一度は心が折れてしまったキャラクターです。歌詞にある「決してもう折れはしない 鋼と一つになれば」の鋼とはポールのことでしょうし、ポールという一本の柱を折れずに天を目指して突き立つ新たな心の柱として見立てていることがわかります。パーカーを着ているスバルですが、パーカーは角度を変えると目線が隠れることを利用して、序盤に自分や現実から目を逸らしていることが表現されていますね。

ポールの後ろに立ち、二つの手を使うことで、交わらない並行世界(あったかもしれない可能性)を表現しているところも面白いです。世界と世界を飛び移るようなダイナミックな動きをすることで、ある道で挫折しても別の道(ifの中の私)に挑戦できること。二つの足を使って回ることで、時計を表し、新たな道を選ぶことで止まっていた時が動きだすこと。歌詞だけでなく、動きでも表現しているのが素晴らしいところです。

中盤までの背景からは、希望を失ったことを表すように全体としては暗い中で、いくつもの光(可能性)がまだ残っていることがわかります。そして吹っ切れて新たな道を見つけたことで暗かった空が青空に変わっていく。終盤に大きくカメラが引くところも良いですね。

www.youtube.com

星北ヒナノ『Wish upon a polestar

主人公星北ヒナノのショーは、4月のリアルイベントにて上映されたショートアニメ最終話の劇中で初公開されました。

ヒナノのショーは実家のプラネタリウムで行われるのですが、プラネタリウムの頂点、見上げた先には目指すべきものとしての北極星ポールスター)があり、そこに向かってポールはまっすぐ伸びています。ヒナノが回りながらポールを少し登り、目指す星に近づいていくその姿は、曲の盛り上がりとマッチして非常に素晴らしいです。

プラネタリウムで行っていることを活かして背景では流れ星が落ちてきて、願いを信じることに絡んでくる部分も良いですね。

バレエ経験があることから踊りにしなやかさがあり(そこに優しさも感じさせ)、一方で秘めた力強さも感じさせる、そんなショーでした。ヒナノの楽曲は自分に大丈夫と言い聞かせるところから始まるのですが、友人の西条リリアの楽曲は誰かを勇気づけるような歌詞になっていて、そんな応援がヒナノの力にもなったのだろうとも思います。

www.youtube.com

ショートアニメ

アニメ本編は、各エピソード10分未満、全部で1時間未満と尺は短めなのですが、主人公ヒナノプラネタリウムのためにポールダンスを始め、仲間とともにそれを披露するまでが描かれています。さっと見れるボリュームなので是非。

www.youtube.com

劇場版への期待

劇場版ではエルダンジュとの対決、特にバレエという共通要素も面識もあるヒナノとユカリの対決、ダブルスのショーもあると思われ、期待が高まりますね。「今、回り始めた私たちの物語。」というキャッチコピーも、ポールダンスの回転とも掛かっていて良いです。

『プリティーシリーズ』で培った技術と経験を生かした新たな挑戦としての本作、応援していきたいです。

*1:そして筐体の演出の都合上

*2:トリックと言うそうです

*3:4月に開催されたイベントでは、声優さんが曲を歌う後ろでポールダンサーの方が踊るという、すごい形でのライブが行われました