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短編ドーム映像の上映会『フルドーム・アート・ハウス』に行った話

こんにちは。

先日の記事↓で、プラネタリウムを観に行った話をしました。その時に、プラネタリウムは夜空を映すだけではない汎用的な映像表現に利用されているのかを調べてみて、「ドーム映像作品」という存在を知りました。

unitcircle.hatenablog.com

その後更に調べてみると、近い時期に短編ドーム映像を一挙上映する会『フルドーム・アート・ハウス』が開催されると知りました(告知ポスト)。早速行って来た*1ので、感想を書いて行こうと思います。

フルドーム・アート・ハウスとは?

プラネタリウムを使って、国際科学映像祭ドームフェスタのショートフィルム部門の入選作品10作を上映するイベントです。元々ドーム映像は制作されてもコンテスト以外で上映ができる場所も機会も多くないため、このようにショートフィルムをまとめて上映する会が企画されたとのことで、今回が初の試みだそう。上映後には映像作家の飯田将茂氏によるトークもあり、ドーム映像の現状や未来について語られていました。

上映されるドーム映像に関しては、下の動画を観てもらうとある程度イメージが掴めるかもしれません。ただ当然ながら、手元で観るのと実際にプラネタリウムで観るのとでは大きく印象は異なります。

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感想

座席と視界

プラネタリウム内は自由席だったため、おすすめされた後方に座りました。段差があって後方に行くにつれて高くなるタイプ、いわゆる傾斜型のプラネタリウムで、後方の座席は倒せなくなっていました。座席を倒さずに座って観ると、映画館のスクリーンが横にも上にも大きく広がった感じです。逆に、前方から中央の座席は倒すことができるので、映画を観るというよりはプラネタリウムを観る感覚に近くなりそう。

映像が始まってまず思ったのは、当然ながら映像の全てが視界に収まらないこと。映画は首を固定してやってくる映像を待つというイメージですが、横にも上にも映像があり、画面を見回す楽しさと大変さが両方あります。その点ではVR映像とも近いところがありますね。

映像の特徴

映画と大きく異なるのが、スクリーンが半球であること。必然的に、回る映像、円状の映像が多め*2になります。逆に、単に上下や左右に移動することは少なく感じました。直線的に動いても、直線的であると感じ取りにくいからかもしれません。四角いスクリーンと直線的な動き主体から、半球のスクリーンと曲線の動き主体になっているという違いがありますね。また、半球であるので平面スクリーンと比べても遠近感が感じられました。

印象的だったのは、10件のショートフィルムのうち*32件が仏教関連の映像だったこと。仏教は詳しくないのですが、輪廻転生の考えと回転の相性は良さそうに思いました。他にも、スクリーン自体が円になっていることから、たくさんあるものが円状に繋がっている表現などもより自然に感じました。実は直線より回転で表現するのに向いた題材は、意外と色々あるのかもしれません。また、登ったり、遠ざかったりする表現にも迫力を感じました。

座席によってどの位置が観やすいかも変わることからか、重要な出来事*4は結局のところ画面中央付近で起こっているようにも思いました。ショートフィルムしか観ていないので確かかはわかりませんが、作り手の伝えたい情報を枠に収め、その情報を追うことで成立する物語を提供するには、四角いスクリーンが向いているのかもしれません。四角いスクリーンが「枠」である一方、半球のスクリーンは広がりを感じさせ、(現実の出来事やVR映像と同じく)ただそこにあるものを観る側が能動的に観る、という形になります。例えば、繰り返し観た場合でもどこを中心に観るかで体験が変わってくるような映像を作ることができるのかもしれませんね。

全体への感想

多くが実験的な映像ではありますが、ここでしか観られないもの、観られない表現を観ているという感覚はありました。一方で、ショートフィルムなので時間も2分~10分と短くあっという間で、あまり掴み切れずに終わってしまったな、という印象もあります。長編ではどういう映像作りがされているのか気になるので、機会があればそちらも観てみたいですね。

プラネタリウムが作られて今年で100年になるそうなのですが、星座以外のより多様な映像を映すという試みはまだ成熟していない段階ではあると思います。作り手もそう多くなく、制作物を展示する場も機会も多くないため、鑑賞者も少ない。そんな段階から、従来とは異なる、ドーム映像でしか体験できないような映像を作ろうとする試みはとても面白いと思いました。映画が(映像の大きさや音響の差はあれど)自宅で手軽に視聴できる時代に、その場所に行くことでしか得られない体験って何だろう?と思ったときに、ドーム映像というのはその答えの一つとなる可能性を秘めているようにも感じました。ドーム映像でしか行えない映像表現が生まれ、多くの鑑賞者に受け入れられ、当たり前の表現になって行くのが楽しみです。

*1:我ながらフットワーク軽く良い動き

*2:「まわるまわる」だ……

*3:最も多いのはもちろん星や宇宙まわりなのですが

*4:そういったものがあまり存在しない作品も多かったですが