まわるまわる

感想を置く場にしたい

2022年下半期良かった映画

こんにちは。

下書きに眠っていた文章を掘り起こして、2022年下半期良かった映画について書いていこうと思います。

2022年上半期良かった映画は↓

unitcircle.hatenablog.com

新作

THE FIRST SLAM DUNK

漫画『SLAM DUNK』を原作者の井上雄彦氏が自ら監督・脚本を務め映画化した作品。原作の熱い試合描写を再現しつつ、新しい観点から再構築を行っていて素晴らしかったです。SLAM DUNK読者に限らず、スポーツ漫画やスポーツ自体が好きな人にはオススメ。自分は原作を一通り読んだことがある身でしたが、本作を観てまた読みたくなり原作を購入しました*1

通常、漫画とアニメは媒体が異なるため、単に映像化すれば同じ印象を与えられるというわけではありません。しかし本作は原作者が自ら関わっているためか、試合の空気感や動き、会話の間などが原作者の意図に近い形で再現されており、漫画を読んだときと近い印象を与えることができているように感じます。漫画がそのまま動いてる……!という感覚ですね。

また本作は、回想を挟みつつ一つの試合丸ごと一つの映画として映像化しています。一つの試合を最初から最後まで見届けるというのは実世界のスポーツ観戦ではよくあることで、作中で試合を観戦していた人々も同様です。ある種(特に初見で、スラムダンクにそこまで詳しくない)視聴者は作中で試合を観戦していた、最初はこの試合にそこまでのめり込んでいない人々の立場なわけです。しかし、本作の試合描写には、バスケットボールというスポーツの面白さが詰まっています。戦術とそれに対する対応、一瞬の隙を突かれると点数が入ってしまう緊張感、得点シーンの鮮やかさ、などなど。場の空気を変えて追い上げて行く湘北を観る内に、視聴者も作中の観客同様、いつの間にか試合から目が離せなくなっていきます。途中で挟まれる回想で選手のバックグラウンドを知っていくことで、思い入れも増していきます*2実世界のスポーツ観戦でも、選手の経歴や苦労を知っていると一つ一つのプレーで感じられるものも変わってきますが、フィクションはむしろ選手のことを知っているのが前提になっているのが興味深い気もします。一つの試合をここまでのクオリティで映像化し、そのクオリティが話の説得力を増す役割を果たしているのが素晴らしい所です。

さらに、本作は原作に新たな視点を加え、その視点を中心に話を展開していきます。新規でも入りやすく、原作ファンも新鮮な気持ちで観ることができます。新たな解釈は、ただ説明されていなかっただけで最初からそうだったかのようにも感じ*3、追加部分は個人的にすごくしっくりきて、一つの映画としてもよくまとまっていると思いました。

バッドガイズ

ドリームワークスによる、児童文学原作のアニメーション映画。予告からキャラデザと動きが良さそうで気になっていたのですが、王道のとても楽しい作品でした。

本作の第一の魅力は、観ているだけで気持ちいいアクションです。2Dと3Dを上手く組み合わせており、映像表現としては『スパイダーバース』を彷彿とさせますね。

キャラクターの関係性で言うと、ウルフとスネークも、怪盗一味としてのチーム感も素晴らしい。ストーリーも王道で、捻り具合もちょうど良かったです。個人的には『かいけつゾロリ』っぽさも感じました(かいけつゾロリ育ち)。

RRR

『バーフバリシリーズ』の監督によるミュージカルアクション映画。

一言で表現するなら、物凄い熱量のある作品でした。どのくらいかと言うと、ここがクライマックスか……と思ったらまだ半分だったくらい。各アクションシーンに迫力と見所があり、また劇伴の盛り上がりも素晴らしい。何よりナートゥのシーンが良かったですね。運命的に出会った二人の物語というシチュエーションも好みでした。

HiGH&LOW THE WORST X

HiGH&LOWシリーズが漫画WORSTとコラボしたスピンオフ作品『HiGH&LOW THE WORST』の続編(前作の感想はこちら)。

シリーズの特徴である気持ちのいいアクション、それを盛り上げる挿入歌は本作でも健在。前作の構図を更に広げてより群像劇的になり、その中でもNo.1とNo.2の関係性の対比が光る作品でした。前作で人気出たんだろうな~というキャラ(小田島有剣)の出番が増えていたのはちょっと面白い。『THE WORST』さえ観ておけば充分楽しめる作品になっており、オススメです。

ヘルドッグス

小説を原作とする、岡田准一主演のアクション映画。

いわゆるヤクザものなのですが、普段こういう作品を観ないのもあってか、"そういうもの"として作り込まれた空気感が凄く、見入ってしまいました。展開にもアクションにも緩急があり、良かったです。音もかなり迫力があり、銃声一発一発が重々しく感じましたね。

劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM [後編]僕は君を愛してる

TVアニメ『輪るピングドラム』を再構成した劇場総集編の後編。

輪るピングドラムの後半というのは特に印象的な回が多く、それらが畳みかけてくるので内容を知っていても圧倒されました。輪るピングドラムは全方向強いですが、特に劇伴が強いですね。また、新規シーンは、TV版の物語を振り返った上でもう一度問い直し、メッセージをより強く打ち出す役割を果たしていて、劇場版が作られた意義を確かに感じることができました。

すずめの戸締まり

新海誠監督最新作となるアニメーション映画。

新海誠作品の特徴の一つである景色の映像美は健在でした。本作は各地を回っていくロードムービーなのですが、色々な景色が観られるというのが強みとマッチしていたように感じます。中盤は「ある場所で人と会ったり扉を閉めたりして、また次の場所に向かう」を繰り返す構成になっており、TVアニメの形式で観てみたいような気もしました。

事前情報を特に仕入れずに初日に観たため、扱っている題材には驚いたのですが、真摯に向き合っていたように思います。主人公の危うさが過去と結びついて納得感が生まれるのも見事。ただ、自分としては前作『天気の子』の、フィクションとしての大胆さやある種の開き直りの方が好みではあったかなとも。

劇場版 Gのレコンギスタ IV 激闘に叫ぶ愛 / V 死線を越えて

TVアニメ『Gのレコンギスタ』の劇場総集編(全5部作)の4作目と5作目。

Gのレコンギスタは、ロードムービー的な要素や、様々な勢力、宇宙の巨大な建造物とその周囲での戦闘が魅力です。(TV版からの変更点をそこまで把握できていませんが)映画館のスクリーンで観ることで、MSに対する宇宙の建造物の巨大さをより感じられた気がします。新規映像で言うと、特にIVの新規戦闘は展開も映像の迫力も凄まじく、この戦闘だけでも劇場版が作られた意義があったなあと思えるほど良かったです。

映画デリシャスパーティ♡プリキュア 夢みる♡お子さまランチ!

『デリシャスパーティ♡プリキュア』の劇場版。(おそらく)初めて観るプリキュアの映画でした。プリキュアの変身シーンは、TVアニメで50回近く観ても飽きないようなクオリティの高さ、細かい部分までの拘りがあって良さを感じていたのですが、映画館のスクリーンで観るとその良さがより伝わってきました。

作中では、タイトルの「お子さまランチ」は大人でも食べていいのか?その資格はあるのか?という話をしていますが、(初めて観に来たのもあって)これはプリキュアの映画は大人が観てもいいのか?にも置き換えられるなぁと思いながら観ていました。また、コメコメ視点の物語にすることで、主人公和実ゆいのカッコいい側面がよく見えるとともに、コメコメの成長物語にもなっているところが良いですね。

神々の山嶺

小説を原作とする漫画を、フランスにてアニメ映画化した作品。

山の美しさ、そして厳しさの描写が力強く、素晴らしかったです。余談ですが、作中で「一定以上の標高では呼吸が困難になり様々な症状が現れ~」のような表現がされていてまるで『メイドインアビス』の上昇負荷みたいだな~と思ってから、メイドインアビスが登山の要素を取り入れていることに気付いたりしました*4

旧作

ペンギン・ハイウェイ

森見登美彦氏の小説をスタジオコロリドがアニメ映画化した作品。

本作は、主人公のアオヤマくんのキャラクター性が非常に魅力的でした。アオヤマくんは小学4年生なのですが、探究心に満ちていて、些細な疑問も自ら実験と観察を行うことで検証しようとする少年です。彼の視点から見る世界は非常に興味深く、魅力的で、自分ももっと世界のことを知りたいと思わせてくれました。個人的には、アオヤマくんのクラスメイトのウチダくん、ハマモトさんと3人で"海"の謎を研究しよう!というパートのワクワク感が一番好きです。色遣い含め映像も美しく、良い作品でした。

HiGH&LOW THE WORST

HiGH&LOWシリーズが漫画WORSTとコラボし、SWORD地区の一角である鬼邪高校を主役としたスピンオフ作品。

本作の特徴は、主人公を含む多くの登場人物が初登場であること。本作の主人公花岡楓士雄は転向から戻ったばかりという設定のため、各登場人物や現在の状況は周りがわかりやすく教えてくれます。HiGH&LOWシリーズを全く知らなくても観ることができる、シリーズ入門に適した作品ですね。*5

素晴らしいアクションやそれを盛り上げる挿入歌も健在。特に本作で対決する鳳仙学園のテーマソング『Top Down』は特にカッコいいです。鳳仙学園はキャラの立った四天王と大量のスキンヘッドで、見分けが付きやすいのも良い所。また希望ヶ丘団地と呼ばれる団地を舞台にした決戦は圧巻で、団地に立てこもる側と攻め落とす側との争いはまるで歴史上の攻城戦でした。いや本当に。

高校生同士の喧嘩に焦点を当てたことで、シリーズ本編からの人物が主人公たちが目指す遥か高みにいる、というのも上手いなと感じました。村山さんも職場では新人で、楓士雄の幼馴染のオロチ兄弟の後輩になってるところ、好きです*6。また、オロチ兄弟のバイクのシーンなど、所々オマージュが入っているのも良かったですね。

世界で一番ゴッホを描いた男

20年もの間ゴッホの複製画を描き続けている方のドキュメンタリー映画。複製画を作り続ける彼は、芸術家なのか?それとも職人なのか?オリジナルの作品が無いままでいいのか?彼にとって芸術とは何なのか?を問うてくる作品で、自分には非常に刺さりました。絵を描く以外のことでも、創作をしている人、してみたいと思ったことがある人には刺さる作品な気がします。

劇場版 艦これ

TVアニメ『艦隊これくしょん -艦これ-』の劇場版。

TVアニメ版は放送当時に観ていたものの、劇場版がどんな話なのか知らなかったのですが、TVアニメ版の例の重要イベントに焦点を当て『艦これ』という作品の設定そのものへと踏み込んでいくのはなかなか興味深かったです。設定の解釈の幅を広く持たせている*7艦これというコンテンツならではという感じでした。戦闘も見所があり、良かったですね。

*1:元々買いたい気持ちはあったのですが、電子版がもし出るならそちらをと思っていたため

*2:これはテンポ的に、特に二周目以降はやや賛否あるかもしれません。BDに試合だけの映像なんかが収録されていると嬉しいかもしれませんね

*3:実際読切の設定を持ってきている部分もあります

*4:影響を受けた作品として本作の原作漫画が挙げられています

nlab.itmedia.co.jp

*5:ちなみに筆者はHiGH&LOW THE MOVIE 1~3は視聴済み、くらいの知識です。

*6:それを作中で安易にネタにしないのも

*7:と認識しているけど一時期触れていただけで詳しいわけではないです