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話数単位で選ぶ、2024年TVアニメ10選

昨年に引き続き、2024年TVアニメの中で特に良かったエピソードを10話選びました。 対象の話の核心まで踏み込んで語っていることもあるため、ネタバレ注意です。

本記事は、aninado さんの「話数単位で選ぶ、2024年TVアニメ10選」参加記事です。 本記事でも採用する、主なルールを引用します。

■「話数単位で選ぶ、2023年TVアニメ10選」ルール

・2024年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。

・1作品につき上限1話。

・順位は付けない。

昨年の記事はこちら↓ unitcircle.hatenablog.com

ゆびさきと恋々 Sign.5「こたえ」

  • 監督・絵コンテ:村野佑太
  • 脚本:米内山陽子
  • 演出:岡英和

yubisaki-pr.com

本作『ゆびさきと恋々』は、手話を始めとする様々なコミュニケーションの形を題材とした作品。 特に前半の1~6話は全て選びたいくらいの名エピソード揃いでした。 中でも今回は、二人だけの空間でお互いのことを知っていき、サブタイトル通り一つの「こたえ」が出るこの回を選びました。

これまで雪と逸臣の二人は口の動きを読み取ったりスマホのメッセージでのやり取りが主でしたが、この回では筆談、雪が渡した手話ノートに文字を書くことでやり取りが行われます。 紙の上のやり取りは単に文章を文字通り伝えるだけに留まらず、お互いの書いた単語を囲んで指し示すような自由さがあったり、お互いの筆跡に個性や感情が出たり。 二人の文字がノート一面に広がって行く様子は、二人の会話の盛り上がりや、二人の間に流れる暖かい雰囲気を表しているかのようでした。 これもまた手(指)から紡がれるやり取りであり、本作が提示するコミュニケーションの形の一つです。

雪は自分の声を家族にだけにしか聞かせないと話しますが、逸臣の前で思わず笑い声を漏らしてしまいます。 逸臣は雪の笑い方を知り、雪のことをもっと知りたい、もっと自分のことを教えたいと思って行きます。 ここの諸星すみれさんによる笑い声の演技、見事でした。

終盤には友人のりんから、逸臣さんの雪に対する目が優しく、雪に対する声がずっと優しかったとも伝えられます。 雪は逸臣が語り掛けてくることを視覚では受け取っていても、声の情報は受け取れていません。 ずっと声が優しかったと伝えられたことで、今まで語り掛けられた出来事を思い返す雪。 逸臣が自分をどう思っているのかで迷っていた雪にとっては、ずっと欠けていたピースがハマったような瞬間だったように思います。

最後には再び逸臣と一対一で話す雪。 「逸臣さんなら大丈夫」がどこまでかという問いに、手に文字を書いて答える雪と、手を取って唇に当てることで応える逸臣。 このタイミングでのサブタイトル「こたえ」の提示とEDへの突入。 締め方も完璧なエピソードでした。

関連:作品全体の感想

治癒魔法の間違った使い方 #011「炸裂! 必⽣の拳!」

chiyumahou-anime.com

『治癒魔法の間違った使い方』、タイトル回収回。

戦闘員ではなく救命団の主人公ウサトは、謎の黒騎士に倒された友人を助け、黒騎士と対峙します。 それはあくまでウサトの攻撃が黒騎士に通じるから*1であり、被害の最小化を考えての行動でした。

ウサトは味方に傷ついて欲しくないのはもちろん、敵を殺すこともしたくないし、できない。 それでも身を守るため団長から、攻撃に治癒魔法を乗せて瞬時に治癒する技法を教わり、傷付けずに相手を無力化できるようになりました。 これこそ「治癒魔法の間違った使い方」ですが、その結果受けた傷を反転してくる難敵を打ち破れたというのはなかなか面白いですね。

黒騎士を倒すまでのシーンは非常にアツいですが、倒して団長に再会した場面も見所。 団長からよくやったと声を掛けられたウサトは、これまでを思い返し、戦場での恐怖心を打ち明けつつも、団長の助けになれて良かった、と伝えます。 ここで彼が、17歳の普通の青年らしさを見せるところも良いんですよね。

対する団長は以前失った部下たちの話題に触れ、「よく生きて帰ってきてくれた」と。 治癒魔法を題材として、他人の(肉体や心の)傷を癒すこと、自らが生き続けることなどを描いてきた本作。 丁寧な積み重ねが実った、大きな山場のエピソードでした。

関連:作品全体の感想

カードファイト!! ヴァンガード Divinez #10「七つ目の願い」

  • 監督:山田卓
  • 脚本:校條 春
  • 絵コンテ:山本浩暉
  • 演出:山本浩暉

anime.cf-vanguard.com

カードファイト!! ヴァンガード Divinez』からは、ヴァンガードを通した兄妹喧嘩として印象的な#10「七つ目の願い」を選出。

妹であるヒカリを救うため、運命大戦に参加した主人公の明導アキナ。 運命大戦の次なる相手となる仮面の正体は、救いたかったその相手。 しかも彼女は、自分が消えた過去から来ていたのでした。

本作の象徴的な台詞が「わずかな光でも手を伸ばした者にのみ奇跡は舞い降りる」です。 運要素のあるカードゲームにおいて、手を伸ばして山札から引こうとしない限り勝利に繋がるカードを手にすることはできない。 そしてそれはカードゲームに限った話ではなく、助けたい誰かの手を取ろうとすることも同様だから、手を伸ばし続けたい。 そんなアキナの信念に対しての「起きなかった奇跡の象徴」が、未来からやってきたヒカリです。 ヒカリは運命大戦によって兄アキナを失い、絶望を味わいながらも、自ら運命大戦に参加して勝利し過去に戻る権利を得たのでした。

本エピソードでは、丸々1話を使って、兄妹対決の1試合を描いて行きます。 試合中盤、アキナは絶望的な状況に追い込まれますが、その状況において山札から必要なカードを引き、窮地を脱することに成功します。 「どうしてこんな時に……」とこぼすヒカリですが、これが完全な偶然でなく、これまでに山札を引いてきた積み重ねの結実であることに気付くのです。 本作はこのように、扱うテーマとカードゲームの展開の結びつきがしっかりと描かれているところも良い作品でした。

カードゲームは、一対一で正面から相手に向き合うことができ、言葉を交わし合うことができる場でもあります。 病弱で兄に引け目を感じていたヒカリと、妹を気遣う良き兄であったアキナ。 二人がお互いに自分の気持ちを曝け出し合い、ヴァンガードを通しての兄妹喧嘩へと至っていく場面はとても良かったです。

OPで毎回二人の登校風景が描かれていたのもあって、試合後にヒカリのこぼす言葉の内でも「一緒に高校行きたかった」が印象的でした。

関連:作品全体の感想

オーイ!とんぼ 第7話「グレートワンパターン」

  • 監督:オ ジング
  • 脚本:広田光毅
  • 絵コンテ:オ ジング、新開彩絵
  • 演出:新開彩絵

tonbo-anime.com

島で暮らすゴルフが得意な少女とんぼと、元プロゴルファーの五十嵐(通称イガイガ)が出会うことから始まる本作。 遊びの延長のゴルフで培ったとんぼの技術に驚嘆した五十嵐は、とんぼに外の世界にも興味を持って欲しいと、外からの刺激として同年代のライバルになり得る存在、円(つぶら)を連れてきます。 そんな円ととんぼが出会い、共にゴルフをすることでお互いのスタイルの違いに驚き、刺激を受けたのが前話である第6話。 引き続き一緒にコースを回っていくことで、とんぼと円のゴルフに対する取り組み方の違いがより顕著に見えてくるのが、この第7話です。

とんぼのゴルフは前述の通り、遊びの延長。 失敗しても打ち直せばいいから、大胆に難しい打ち方を選んだり、自らの拘りで同じゴルフクラブを使い続けたりと、自由にゴルフを楽しんでいます。 そして、これまで自由な発想でゴルフを遊んできたからこそ、とんぼのゴルフは非常に幅が広く、高い技術を有しているのです。

一方の円のゴルフの軸は、サブタイトルにもある「グレートワンパターン」。 競技ゴルフにおいて障害になり得る「迷い」を極力回避するため、円は基本のスイング軌道を統一し、それだけを練習しています。 また、失敗したら大きく打数が増えるようなルートは選ばなかったり、相手より先に打てるような場所を狙うことで後続のプレッシャーを回避したりと、中学生離れした立ち回りを見せます。 「ゴルフは技術だけではない」と五十嵐が語る通り、あくまで「勝つゴルフ」を徹底しているのです。 本作でこれまで描かれてきたのはとんぼの遊びのゴルフであり、ここに競技ゴルフという別のゴルフが入ってくることで、よりとんぼのゴルフの異質さが際立つところが良かったですね。

この二人のゴルフに対する向き合い方の違い、お互いに与える刺激などを感じるだけでも面白いこのエピソードですが、 終盤とんぼが案内した島の絶景ポイントで将来について話す場面もまた印象的でした。 一面の海の向こうに思いを馳せた円は、世界一の舞台でゴルフで勝つことが夢だと語ります。 一方であくまでこの島から出るつもりはなく、海はこの島の景色にすぎないかのように語るとんぼ。 同じ景色、同じ海を見ているのに、二人の考えは全く別。 そんな中で円はとんぼに「もっと違う世界があることを認めたくないだけなんじゃないの」と、(五十嵐と比べ)同年代だからこその強い言葉をぶつけるのでした。

2クール目の九州女子選手権編でも非常に面白い回が多くある本作でしたが、島の中しか知らないとんぼが同世代で近い実力、更には真逆のゴルフスタイルの少女との初対決であるこのエピソードが印象的だったため、今回はこちらを選びました。

関連:作品全体の感想

HIGHSPEED Étoile #07「幸運の女神」

highspeed-etoile.com

レース結果の上位が固定されつつある、近未来レース。 そんな中でデビューした主人公輪堂凛の見せる無謀さが、徐々にレース結果にも影響を与えていく様子を描いた本作。 その影響が一つ形となり始めたことを示すエピソードとして、この回を選びました。

本作の主人公は輪堂凛ですが、この回はソフィア・B・時任の(いわゆる)担当回。 アニメという複数の話から構成される形式において、回ごとに焦点を当てる人物を変えていく担当回という概念が自分は好きなんですよね。 一方で脇エピソードというわけではなく、輪堂凛にとっても大きな意味を持つ回であったのも良かったです。

序盤、いつもしっかりと化粧をしているソフィアに、大変じゃないですか?と尋ねる凛。 ソフィアの「あそこには一番かわいい自分で乗りたいの」という言葉が、心からの言葉であったことが後々明らかとなります。

レース前から妙にツイていたソフィアは、レース序盤からリボルバーストを仕掛けてトップに躍り出ます。 この時点でもうレースとして盛り上がりを見せており、エンタメとしても良い方向に向かっていることが感じ取れます。

中盤、徐々に迫られるソフィア。 うっかりタイヤ交換を忘れますが、天候悪化によりそれがいい方向に。 これは輪堂凛にとっても追い風となり、雨用のタイヤに変えることで、一気に表彰台が圏内に。 これまでの輪堂凛の成績からしたら、これでも充分満足できる結果です。

今日のソフィアの走りは、ami曰く「最高の走り」。 常に同じ結果にならず、二度とない走りを観ることができるからこそ、レースは面白いのです。

それはただ運が良かっただけでなく、自分に賭け、一着を目指して攻めた*2からこそ。 そこに気付いた凛は、表彰台に上がるだけで満足せず、一着を目指す決意をします。 「一着を諦めたらそれはドライバーでない」。 果敢に挑んだ凛はコースアウトして撃沈しますが、最後まで一着を諦めなかった凛。

ソフィアは、勝利の女神がいるとしたらそれはキングやクイーンに立ち向かう心を思い出させてくれた凛だと語ります。 ソフィアに焦点を当てつつ、まだ結果には残らずともドライバーとしての凛の成長も描かれた、名エピソードでした。

関連:作品全体の感想

夜のクラゲは泳げない 第2話 「めいの推しごと」

yorukura-anime.com

今風な要素を扱っていた『夜のクラゲは泳げない』ですが、中でも要素の落とし込みや再解釈が秀逸と感じたのが第2話「めいの推しごと」でした。

木村ちゃんこと高梨・キム・アヌーク・めいが登場する本エピソード。 この1話の中での情報提示が見事で、木村ちゃんが花音に言い放った「嘘つき!」という言葉、木村ちゃんが橘ののかに惹かれたきっかけ、なぜ今ののかと似た黒髪の姿なのかなどがその話の内に回収されていきます。

橘ののかに戻ることを花音に断られ、推しであり、自分を一人にしないと約束してくれた橘ののかを失った木村ちゃん。 ピアノの試験を受ける木村ちゃんの一人称視点では涙で曇り、手は震えています。 そこに「いつか木村ちゃんの演奏を聴きにくる」という約束を果たしにやって来る花音。 それを見た木村ちゃんは勇気づけられ、涙も震えも止まり、演奏を始めます。 木村ちゃんの演奏と共に流れる映像は「橘ののか」という推しを得て輝いていく日々であり、その時の感情が鍵盤に、音に乗っているように感じられました。 特に、橘ののかの写真を音楽家肖像画と並べたり、ののかグッズがピアノコンクールのトロフィーと並んでいくのは、木村ちゃんがずっと励んできた音楽と並び立つ存在になっていることを(語らずとも)伝える映像になっていて、とても良かったです。

印象的なフレーズ「解釈違いです!」は、当初「サンフラワードールズの橘ののか」をやめた花音に対して発せられたもの。 それがエピソード終盤には橘ののかと山ノ内花音の両推し、すなわちののたん箱推し」になることで解釈違いでなくなった、というのもおもしろい。 一方で、花音という推しと友達になったことが新たな「解釈違い」になるという落とし方も見事です。 3人の写真を撮った後で暗くなったスマホに木村ちゃんの笑顔が映るラストですが、昔の写真を消して木村ちゃんの無表情が映る冒頭と対応しているのでしょう。 本編に重なるEDも含め、気持ちのいいエピソードでした。

関連:作品全体の感想

響け!ユーフォニアム3 第十二回「さいごのソリスト

anime-eupho.com

一大シリーズの完結作『響け!ユーフォニアム3』からは、本作を象徴する回「さいごのソリスト

コンテスト出場者のオーディションでは、通常は部員たちは「選ばれる側」。 ただ今回主人公黄前久美子と転校生黒江真由は実力が伯仲しているとされ、公開オーディションによって部員全員が「選ぶ」ことが決まります。 これだけなら一期と同じで、滝先生によるどちらかというと部員に納得感を与えることが目的な提案*3でしょう。 しかし高坂麗奈と共に北宇治で3年間を過ごしてきた久美子は、演奏者の姿を隠すことでより公正に近いオーディションを提案します。 教師の想像を超えてきた生徒に滝先生が感慨深くなる場面は、流石に良いシーンでした。

公開オーディションでは、部員たちは投票先の選択を迫られます。 特に、一緒に演奏して演奏者が誰かを感じながら自分の票によってソリストが決まってしまう状況でも自分の信念に基づかざるを得なかった麗奈、 結果がわかりそれを望む人ばかりではないことも知りながら前に出ざるを得なかった真由の二人は「そうするしかない」という決断を迫られました。 自らの気持ちよりも、二人を含む部員たちの選択、決断を「部として実力主義を徹底できたが故にこれが最強メンバーである」と演説により部員を鼓舞する材料にしてみせた久美子は、最大の決断をした人物だったと言えるでしょう。

滝先生や麗奈、久美子が求める実力主義という「正しさ」はあくまでも理想であり、それによって生まれる軋轢も描いてきたのが本作だと思います。 今回仄めかされた真由の過去のオーディションでの出来事もそれに該当しますし、今回も久美子の決断で久石奏は涙していました。 久美子自身もまた「死ぬほどの悔しさ」を感じつつ、「この気持ちも、頑張って誇りにしたい!」と麗奈に誓います。 悔しさすらも誇りにしたいと思えるのは、本気で努力し、自分の信じる正しさによって結果が決まったから。 そういった気持ちを抱くことができたこともまた、(困難であっても)正しくあろうとしたことの価値なのではないでしょうか。

関連:作品全体の感想

菜なれ花なれ 第6話「※温泉でチアはいけません。」

  • 監督:柿本広大
  • 脚本:綾奈ゆにこ
  • 絵コンテ:岩畑剛一
  • 演出:福井洋平

narenare-anime.com

『菜なれ花なれ』からは、いわゆる温泉回「※温泉でチアはいけません。」。 前話でスタウトレコードの話が落ち着き、これからPoMPoMsとして何をしていくのかを決めていく回です。

本作を通じての良さでもありますが、このエピソードもPoMPoMsのみんなのいつもと少し違う側面が見えてくるところが見所でした。 PoMPoMsの泊まる旅館の温泉に偶然やってきた鷹ノ咲高校チア部の先輩たち。 華先輩がかなたからキックトリプルを教わろうとする場面では、これまであまり描写されてこなかった、かなたの天才性がピックアップされます。 温泉でチアの技を決めようとする華先輩のめちゃくちゃさと、サブタイトルでもある「※温泉でチアはいけません。」のテロップはかなり笑えるポイントでした。

またPoMPoMsの専用チャンネルをなぜ作ったのか?と聞かれた杏那が、「PoMPoMs続けたかったから……」と恥ずかしがるところも、普段とは違う一面でした。 PoMPoMsがみんなにとってどんな場所であるかを語り合い、お届けチアをやっていくことが決まっていく。 箸休め的な、良いエピソードでしたね。

最後のCパートでは、夜に二人で温泉に入る涼葉と詩音。 恥ずかしがる涼葉に、大胆にも「もっと照れくさいこと」をお願いする詩音。 夜が明けると、昨日まで名字で呼び合っていた二人がいい雰囲気で名前呼びに……(何があったの~!怖いよ~!)。 この出来事も、温泉地の特別感が一つのきっかけとしてあったような気がします。

関連:作品全体の感想

BEYBLADE X #048「七色の決着」

  • 総監督:秋山勝仁
  • 監督:寺田素都
  • 脚本:森地夏美
  • 絵コンテ・演出:小島隆史

beyblade.takaratomy.co.jp

『BEYBLADE X』は特に終盤のXタワー頂上での決戦が面白く、#51「最高の遊び」とも迷いましたが、今回は#048「七色の決着」の方を選びました。 偶然ですが『カードファイト!! ヴァンガード Divinez』と同様、兄弟姉妹間の対決の回ですね。

過去一度も勝てなかった姉シグルに勝負を挑むマルチ。 マルチは多彩なベイを扱える一方、シグルはバランスタイプしか使うことができません。 シグルがいつも言う「マルチはすごい」は本心からの言葉ですが、負けてばかりのマルチはその言葉がすごく嫌でした。 負けたことが惨めで、負けた自分にすごさなんてないと思っていたからでしょう。

自分は姉だからマルチのことはわかっている、マルチは自分に勝てないとマルチに言い放つシグル。 マルチはそんなシグルではなく、後ろにいるチームペルソナの2人のことを見つめていました。 ベイブレードといえば、基本はフィールドを挟んで相手と向かい合う競技。 バトル中ではないとはいえ、後ろを向いた状態から2人と頷き合い、またシグルに向き合うマルチの姿は印象的でした。

シグルがよくわかっているのは、シグルと一緒にいた頃のマルチ。 その後マルチは努力し、チームペルソナの2人と出会い、共に高め合って来た、それは本作で描かれてきた姿そのものです。 これまでの過程が大きな意味を持ってくる、そういう描写に自分は弱いんですよね。 マルチ1人ではシグルに勝てなくても、3人ならきっと。

決着がついた後、シグルは「やっぱりマルチはすごいね」とまた本心で口にします。 マルチがずっと嫌いで、素直に受け止められなかった言葉。 その言葉を素直に受け入れ、「ありがとう」と笑顔で返せたことが、何よりマルチにとって素晴らしいことだったと思います。

関連:作品全体の感想

ネガポジアングラー 第11話「言わなきゃいけない」

釣りは、それを趣味にしていない人からすると(あえて悪く言えば)時間が余っている暇人のやるもの、のようなイメージを抱かれがちではないでしょうか。 余命を宣告された主人公の常宏が釣りを経験していく本作では、借金を抱えていたり病を患っている中で、彼が釣りをやっている場合なのか?が一つのテーマになっていると感じていました。

言い合いになり同居していた貴明が家を出て行ってしまった中で、釣りに集中できない常宏。 ハナに基本を忘れていると指摘され、常宏は貴明に釣りの基本を教わったときのことを思い出します。

仲直りしたい常宏は、貴明に救われた(掬われた)ことを思い出し、謝るのではなく礼を言おうと思い立ちます。 「釣りなんかしてる場合じゃない。躑躅森を探しに行かないと」と動こうとする常宏へ、ハナの「だったら釣りしてる場合だろ。釣りをしてれば貴明に会える。貴明の居場所は今、釣り場しかないんだから」という台詞が印象的。 常宏が釣りに居場所を求めたように、今の貴明も釣りに居場所を求めている。 まさに「こういう時こそ、釣りをしている場合」なのです。

常宏にとっての釣りは、これまでも楽しみつつも、どこか余命や借金からの逃げ先な部分もありました。 しかし常宏はここに来て、これまで以上に能動的に釣りに向き合い始めます。 貴明も釣ろうとしていたシーバスを釣るため、しっかり下調べして取り組むことで、少しずつ釣りへの理解も増していきます。

貴明に助けられたことに向き合い、釣りと向き合い、そうやって色々なものと一つ一つ向き合っていくことで、逃げていた病院の予約にも成功。 これまで学んだことを活かして釣り場に向かう道で、常宏は遂に貴明と再会する(貴明を釣り上げる)ことができる。 本作のこれまでの積み重ねが結実したような、見事なエピソードでした。

その他候補話数

  • ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する episode.1「私を殺した婚約者」
    • 6度の人生を楽しむ姿と、月夜の下のプロポーズ
  • 悪役令嬢レベル99~私は裏ボスですが魔王ではありません~ 第11話「裏ボス、告白される」
    • サブタイトルの出し方と、暗闇でのじゃんけんという儀式
  • となりの妖怪さん 第5話
    • SFチックな題材まで扱う幅の広さと、特殊EDによるまとめ方の見事さ
  • ひみつのアイプリ 第17話「アイスマイリンのひみつ」
    • 「ネバギバラバー」っていい曲すぎる
  • モブから始まる探索英雄譚 第10話「いま自分にできること」
    • ひかりんとミクの関係性
  • 義妹生活 第9話「義妹 と 日記」
    • パラパラ散らばっていく日記とタイトル回収
  • 小市民シリーズ 第6話「シャルロットだけはぼくのもの」
    • 珍しく小鳩くんがお菓子に執着を見せる良さ
  • ダンジョンの中のひと 第2話「ダンジョンの仕事始め」
    • ダンジョンの内情がわかってくる面白さと、ベルの表情変化の楽しさ
  • 星降る王国のニナ 第5話「深紅の瞳」
    • ニナの折れない意志の強さ
  • メカウデ 第6話「友達っていうのはつまりその…」
    • OPと対応したガラス破りの気持ち良さ

昨年より選定が難航したこともあり、入れられなかった回を追加で10話ほど選んでみました。 これでも泣く泣く選べなかった回もあり、TVアニメ1年分の名エピソードの多さを改めて感じましたね……

*1:ウサト自身理屈はわかっていないものの

*2:amiの表現を使うなら「サイコロを振った」

*3:あえて悪く言うなら責任逃れ